顔はいかついけど実はとても優しいお不動さん|不動明王(ふどうみょうおう)
一見すると怖そうに見える人でも「実は、根がとても優しい人だった……!」ということがあります。
見た目と実際の中身が違うギャップは、時には人を引きつける魅力にもなるようです。
「お不動さん」の愛称で親しまれている不動明王(ふどうみょうおう)
燃えさかる炎を背負い、怖い顔をしておりますが、その心は人々を救いたいという慈愛に満ちています。
では、なぜ怒っているのでしょうか?
我々凡人は、大抵、自分の思い通りに行かないときに怒ります。
お不動さんは、人々がどうしても悪事を止めないとき、また、心の中の煩悩が押さえようもなく沸き上がってくるとき、思いやりの怒りでそれらを叱ってくれるのです。
つまり、優しいお顔だけでは言うことをきかない悪いものを正しい道に導くためなのです。
人間もいろいろですから、優しい言葉だけではきいてくれない人もいます。
お不動さんの怖い顔は、なんとかこの人に立ち直ってもらいたい、しっかり仏道を歩んでもらいたいという心の表れで、内心は慈悲そのものなのです。
昔は雷おやじといわれるような恐い父親も結構いたものです。
母親は優しい方が良いのでしょうが、その一方に、時には厳しく恐い父親がいてこそ子供は健全に育つのかもしれません。
不動明王(ふどうみょうおう)右手に持った剣は、悪を切り裂くためとされています。
左手に持った羂索(けんさく)と呼ばれる縄は私たちを救い、仏縁に導くとされています。
後に背負った炎はすべての障害やけがれを焼き尽くすためです。
不動明王の左右には脇侍(わきじ)がおります。
右が矜羯羅(こんがら)童子、 左が制多迦(せいたか)童子です。
右の矜羯羅(こんがら)童子の身体は白く、その性格は小心者で従順であるとされ、穏やかで親近感のある表情にそれがあらわされているように思われます。
左の制多迦(せいたか)童子の身体は紅蓮華(ぐれんげ)のような赤色です。
不動明王の真の心を知らない衆生に対して怒りの心を込めて接するとされることと関係があるのかもしれません。
お不動さんをたとえるならば、
すべてを暖かく受け入れてくれる母親の愛情に対し、
子供が誤った道に進み始めたとき、それを厳しく叱って正しい生活に戻してくれる父親の愛情です。
雲林寺では毎年5月28日に不動尊春祭り、10月28日に不動尊秋祭りを開催しております。
昨今、子供に対し優しい父親が増えつつあるように思います。
現代こそ、不動明王のような慈悲を正しく理解することが今後は大切なのかもしれません。
この記事へのコメントはありません。