作務衣(さむえ)のススメ
作務は「務めを作す」の意味で、修行道場における清掃や炊事、庭や建物の手入れや農作業など、全ての労働を指す言葉です。
作務衣(さむえ)は、禅宗の僧侶が労働(作務)をする時に着る作業着の事です。
つまり、私の日常着、作業着です。
作務を行う目的で作られているため、とても動きやすいです。
そもそも、作務衣の原型は、曹洞宗開祖、道元禅師が著された『正 法 眼 蔵』に出てくる安陀衣(あんだえ)が作務衣の原型とされています。
当時、道元禅師の修行道場は、着物をたくし上げてお掃除や作業をしていました。
それから、袖を絞り膝下までの丈のある長作務衣が登場し、これと戦時中に広まったモンペを合わせるようになることで、上に着る、今の短作務衣が現れます。
作務衣が上下に分かれた形になるのは実は戦後のことなのです。
雲林寺は寒冷地にあるため 夏よりも冬が長いのですが、冬は作務衣の下に着込み、暖かく着こなす事ができます。
また、暑い夏はそのまま着用し 温度調節ができるのが特徴です。
現在、居酒屋、割烹料理屋、旅館などで多くの方が作務衣を制服として着て働いているようです。
動きやすさだけでなく独特の 和 の雰囲気を醸し出すところが受け入れられているのかもしれません。
禅寺では、作務 をとても重要な 修行 として位置づけています。
普段の何気ない生活(洗面・食事・入浴・用便など)そのものも修行であり、作務もまた同様に 自己を調える修行 であるとしています。
清掃、炊事、庭や建物の手入れ、あらゆる作業を丁寧に誠実に務めることが、自分を磨く修行になるのです。
作務 という言葉は、今を生きる私たちに 役割を担う意味 について大切な問いを与えてくれます。
与えられた役割を、「好きな仕事ではないから」「やりがいが感じられないから」と嫌々こなすのか、それとも、自己を成長させる機会と捉え、正面から向き合うのか。
自分の心構え一つで、人生の貴重な時間と労力が「大きな無駄遣い」となるか、「かけがえのない財産」となるかが決まるのです。
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