そのバイト、関わってはダメです|金銀財宝と毒蛇|苦しみからの解放|お釈迦様の教え
「楽して稼げる」闇バイトによる事件がニュースになっております。
お金はいつの世も人を迷わせます。
底の知れない欲の心を仏教で貪欲といいます。金が欲しい、物が欲しい、名誉が欲しい、という私たちの欲の心には、際限がありません。
お釈迦様にはこんなエピソードが伝えられています。
「そこに、毒蛇がいるぞ。かみつかれぬように気をつけなさい」
お釈迦様に従って歩いていた弟子に声を掛けたのです。
その会話を聞いた農夫が、怖いものみたさにのぞいて見てみると、なんとそこには、まばゆい金銀財宝が、地中から顔を出していたのです。
「昔、だれかが埋め隠したにちがいない。こんな宝を毒蛇と間違うとは!」と言い農夫は喜んで持ち帰りました。
農夫の生活はいっぺんに華美になり、国中の評判になってしまいました。王様の耳にも入り、怪しまれ、ついに農夫は白状しました。
「財宝を横領するとは、許せぬ大罪。死刑に処するが3日間の猶予を与える」と、言われ農夫は一旦帰宅しました。家族は、嘆き悲しみました。
「ああ、お釈迦さまは偉い。間違いなく毒蛇だった。オレが噛み殺されるだけでなく、妻子にまで毒がまわり、たいへんなことになった。家族そろって平和に暮らせるのが何よりだったのに。財宝が、かえって身を責める道具になった」
農夫は心から懺悔しました。
翌日、王様より呼び出しがかかりました。死刑が早まったのかと、農夫は青ざめて法廷に出ると、
「おまえの罪は許す。理由は、おまえが帰る前に床下に家来を忍ばせて、全てを聞いた。心から懺悔しているようだ。考えてみれば、おまえばかりが毒蛇にかまれるのではなかった。とりあげる私(王様)も、酒色におぼれ、国を破滅させるところだった。財宝はお釈尊様に使ってもらおう」
一部始終を聞かれたお釈尊様は、微笑されながら、
「この世の宝は身を苦しめる道具になることが多い。さっそく、みんなが絶対の幸福になる仏法を伝えるために使おう」
と、お預かりになりました。
「悪銭身につかず」「楽して手に入るものは失われる」
と言われますが、失うどころか、身を滅ぼしてしまってからでは取り返しがつかないのです。
闇バイトに飛びついてしまった若者は、毒蛇の被害者なのかもしれません。
お釈迦様は説きました。
「貪欲に染まった人は、流れのままにおしながされていく。それはまるで、蜘蛛が自分でつくりだした糸の上を進んでいくようなものだ。執着し、貪る者は、ますますそこに縛られてしまう。自分の糸で巣を作ると、その糸の上しか歩けないのと同じである」
貪欲に染まれば染まるほど、逆に縛られ、自らを苦しめてしまうのです。
お釈迦さまは、長い修行の末、人が生きるのにつきまとう苦しみのメカニズムを解き明し、苦しみから解放されるための智慧を、生涯を通じて人々へ伝え広めました。
蜘蛛の糸を断ち切り、一切の苦…は不可能にしても最小限の苦、から解放され、自らの道を進む人生でありたいと願います。
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