香の十徳
日本でのお香の歴史は長く、伝来した当初は邪気をはらうために用いられました。
その後、平安時代には、貴族たちの美しさの演出の一つになり、鎌倉時代には精神統一のために用いられ、江戸時代以降一般にも浸透して行きました。
私たち日本人にとって古くから馴染み深いものです。
お香の効能を端的に伝える香の十徳という詩文があります。
北宋の詩人、黄庭堅こうていけん(1045-1105)によって記された漢詩です。
この 香の十徳 を、あの 一休さん でお馴染みの 一休宗純 いっきゅうそうじゅん がまとめあげ、日本に伝えられたといわれております。
一休宗純は、京都にあります臨済宗の大徳寺のお坊さんでした。
この大徳寺は、香道の志野流と縁が深かったようで、そこでの機縁があったといわれています。
感格鬼神(かんかくきじん) | 感覚を研ぎ澄まし集中できます。 |
清浄心身(しょうじょうしんじん) | 心身を清浄にします。 |
能除汚穢(のうじょおえ) | けがれやよごれを除きます。 |
能覚睡眠(のうかくすいみん) | 眠気を覚ましたり、眠りを誘います。 |
静中成友(せいちゅうじょうゆう) | 孤独な時に安らぎをもたらします。 |
塵裡偸閑(じんりゆかん) | 忙しい時にくつろぎを与えてくれます。 |
多而不厭(たじふえん) | 多くあっても邪魔になりません。 |
寡而為足(かにいそく) | 少なくても十分に香ります。 |
久蔵不朽(きゅうぞうふきゅう) | 長期保存してもいたみません。 |
常用無障(じょうようむしょう) | 常用しても害がありません。 |
時は変われども、この 香の十徳 の教えは、慌ただしく何かに追われる現代の私たちにこそ大切なものではないでしょうか。
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